中国のEC市場に参入するには、現在の中国のECの状況と中国の消費者の傾向を知ることが重要です。また販売にあたって手続きなどにおいても日本とは違う部分も多くあるので実際に参入する際には注意が必要です。最低限これだけは抑えておきたいポイントをご紹介していきます。
中国の近況
中国は世界一のEC大国と呼ばれるだけあって、ネットでモノを買うのが一般的な社会になっています。日本もそうじゃないかと思われるかもしれません。全ての消費の中からでECの占める割合をEC化率と呼びますが、経産省の報告書によると2018年のBtoC小売市場のEC化率は中国が22.7%だったのに対し、日本は7.3%で約3倍もの開きがあります。中国では、日本以上にECが日常の購入手段として浸透していると分析できます。
中国のECの市場規模は2018年に160兆円を超え、日本とは10倍以上、中国に次ぐ世界2位の規模を持つアメリカと比較しても約3倍です。
中国のEC化率は上昇を続けており、中国市場全体の成長とともに中国EC市場は今後も高い成長が予想されています。
中国内のECシェア
中国内ECのBtoCにおけるユーザー動向ですが、ECモールからの購入がそのほとんどを占めています。ECモールは日本でいうところの楽天やamazonをイメージしてください。
自社単独でECサイトを立ちあげた場合、有名ブランドでも集客は容易ではありません。ECモールへの出店が多くの企業にとって中国進出の足掛かりにはベストです。
中国内のECモールの状況ですが、アリババグループが運営する天猫(TMALL.COM)と京東(JD.COM)、この2つのモールだけで中国のBtoCのEC市場におけるシェアの80%以上を占めています。日本やアメリカで絶大なシェアを持つamazonは2004年に中国でサービスを開始しましたが1%程度のシェアで低迷し、2019年に撤退しました。中国内のECモールといえば、まず天猫と京東の2つを覚えてください。
52.5%
31.3%
16.2%
中国内越境ECのシェア
越境ECに限定したシェアではネットイースが運営する越境ECモールkoala(コアラ)が2019年まで7年連続でトップ、天猫の越境ECモール・天猫国際、京東の越境ECモール・京東全球(現・京東国際)と共に3強を形成しています。しかし2019年に天猫国際を運営するアリババグループがkoalaを買収し、越境EC分野でも約半分のシェアを占める状態になっています。koalaは買収にともない天猫国際との統合も噂されていましたが、現在のところそれぞれ独立したモールとして運営されています。
26.2%
22.4%
13.4%
12.5%
27%
中国2大ECモール比較
中国の代表的なECモールである天猫と京東を比較します。天猫、京東とも中国の法人であることが出店条件となっているため、現地法人の設立が必要となります。しかし、多くの海外企業にとって参入障壁が高いことから、海外企業の出店を促す目的で越境ECカテゴリが用意されています。天猫には天猫国際、京東には京東国際という越境ECカテゴリがあり、ここなら現地法人を設立することなく日本にいながら出店が可能です。天猫国際と京東国際は独立したECモールですが、天猫と京東それぞれのECモールの一部としても機能しているので大きな集客が見込めます。
SHBはECサイトの出店サポートだけでなく、中国内現地法人の設立手続きの代行と会計・事務手続きなどの事務所運営の代行にも対応していますので、現地法人を設立しての出店もお任せください。
天猫(TMALL.COM) | 京東(JD.COM) |
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中国ECプラットフォーム最大手の阿里巴巴集団(アリババ)が運営するECモールで天猫は「テンマオ」と発音します。日本では知名度はありませんが流通規模は世界1位で圧倒的な集客力を誇っています。日本でいう楽天に近い存在で出店形態も似ています。アリババといえばタオバオが有名ですがタオバオがCtoCのビジネスユーザー向けに対し、天猫はBtoCの個人向けという位置づけになっています。 | 天猫を追うライバル的な存在で京東は「ジンドン」と発音します。家電中心のECモールとしてはじまり、現在あらゆるジャンルの商品を扱っていますが、今でも約50%の売上は家電が占めています。モール内に自社店舗を開いて運営していく形式と、京東に在庫を委託して京東が販売する形式の2つが選べることからamazonに似た出店形式となっています。 |
流通規模 | |
約 45 兆円
天猫の2018年の年間流通総額は約45兆円と見られています。楽天が約3.5兆円ですから、その巨大さがわかると思います。 |
約 27 兆円
京東の2018年の年間流通総額は約27兆円でアメリカのamazon.comと拮抗しています。 |
出店基準 | |
両モールとも中国の現地法人であることが条件のため、日本企業が出店するには中国内に法人を設立しなければなりません。信頼性やユーザーの安心を重視するため、利用者の問い合わせなどサポートできる体制が必要です。その他にもブランド力や知名度のある販売数が見込める商品を扱っている必要があり、出店へのハードルは高め。出店審査にも2カ月程度の時間を要します。 出店している日本企業は誰でも知っているような企業やブランドばかりです。 |
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日本企業の出店状況 | |
ユニクロや無印良品、ニトリ、パナソニック、ソニーといったメーカーが旗艦店を出店しています。 | 日立、ファンケル、DHC、アデランスなどが旗艦店を出店。楽天など小売店も出店しています。 |
越境ECカテゴリ | |
天猫国際 | 京東国際 |
2014年にサービスをスタート。koalaと共に中国における越境ECの代表格の地位を確立しています。天猫に出店することが企業のステータスになるほどユーザーに信頼されています。 | 2015年に前身の京東全球がサービスをスタート。2019年に京東の一般貿易輸入事業と統合し、京東国際に名称変更。日本製品専門の「日本館」もあり、日本企業が多く出店しています。 |
出店基準 | |
日本法人の出店が可能で中国内の小売業許可証の取得も必要ありません。その他の条件は越境専用ECモールといっても天猫と京東とほぼ同じで厳格です。 | |
日本企業の出店状況 | |
資生堂、花王、ミキハウス、カルビー、ライオンなどのメーカーやマツモトキヨシや三越など小売企業も多数出店しています。 | カシオ、資生堂、花王、ムーニー、カルビーなどが出店しています。天猫国際と両モールに同時出店している企業も多数です。 |
大手ECモールの出店基準について
天猫や京東は越境ECモールへの出店も含め、その基準は大変厳しいものになっています。中国では偽物の流通が問題になっていたこともあり、偽物の流入を防ぎ、信頼のおける業者のみを選定することでモール全体のサービスの品質を保っています。日本の楽天やamazonと比較すると基準は甘くありません。実際にご相談いただいた際には、天猫、京東の基準を満たさない場合でも、その他の流通手段がないか調査し、販路の開拓を支援させていただきます。
中国市場とのマッチング
越境ECで重要なのは中国で売れる商材を持っているか、これが一番のキーポイントです。越境ECで売れ筋の代表的な商品ジャンルは化粧品、日用品、安全性の問われる商品(健康食品・離乳食など)、そして中国現地より日本のほうが価格の安い商品などがあげられます。扱っている商品が、中国で受け入れられる見込みがあるのか見極めてください。インバウンドの訪日客が購入する商品はひとつの目安となります。
その他に注意する点として関税が高い商品や商品単価が安く輸送費の高い商品、現地でも容易に購入可能な商品は売れたとしても利益を出すのが難しい場合があるので、販売価格と経費をシュミレーションしておくことが重要です。
中国への輸出や販売ができない商品として生鮮品・食品や生物、医薬品、デジタルデータ、出版物などが該当する可能性があるので、これらのカテゴリの商品を扱う場合は確認しておきましょう。
Q&A
SHBへいただいたご質問の中から中国越境ECサービスについて多くいただいた事項をまとめさせていただきました。
はい。ECに必要なトップページ、商品ページ、インフォメーションページなど中国人ユーザーの感性がわかる中国支社のスタッフが制作します。日本語の原稿から中国語へ翻訳してコピーや商品説明などを制作しますので、ベースとなる宣材をいただく必要がございます。
運営サイトの経験を活かし、ショップ戦略・最適なプロモーションのご提案や効果測定を行い、お手伝いさせていただきます。
出店に当たっての必要な準備や審査・手続きなどがお客様ごとに異なりますので、一概にお答えすることができません。個別にご相談させていただくことになりますが、最短でも2カ月はかかると想定しただくとよいと思います。
日本国内から中国へ発送する場合、弊社指定の東京の倉庫へお送りください。また在庫量にもよりますが、中国の弊社の倉庫に置くことも可能です。